この事例の依頼主
50代 女性
お父様が亡くなり、その相続に関して長女、二女及び三女3名からご相談を受け、受任した事件です。相続人は被相続人(父)の子供5名であり、長男・二男グループと長女らのグループに分かれている状況でした。本件相続に関しては、遺言が作成されていましたが、遺産の半分近い価値を占める土地が被相続人が経営していた会社に遺贈されており、相続税以外にも課税上多くの問題(譲渡所得税、贈与税、法人税等)が発生している状況でした。このような課税上の問題を回避するためには、会社が遺贈を放棄することが必要でしたが、放棄した遺贈の対象となっていた遺産を長男が1人で取得すると主張したことが話し合いが進みませんでした。また、本件では相続人間で共有している収益不動産があり、生前は被相続人が各人に賃料を定期的に分配していましたが、被相続人が亡くなってからは長男側が事実上通帳等を管理し、賃料の分配を勝手に止めていました。このような状況で、弊所にご相談がありました。
本件相続の最初の問題である遺贈の放棄については、原則、準確定申告の期限までに解決する必要がありました。そこで、依頼者らから長男に対して課税上のリスクを説明し、長男も税理士に相談した上で遺贈を放棄しました。次に、放棄された遺贈の対象となっていた遺産について遺産分割を申し入れましたが、長男・二男側からは、遺言の趣旨からすると、遺贈の対象となっていた遺産は長男が取得するべきとの主張がなされ交渉はまとまりませんでした。そこで、依頼者らは、遺産分割調停を申立て、最終的に放棄された遺贈の対象となった遺産を長男が取得し、依頼者らに代償金を支払うとの内容で調停が成立しました。なお、本件は不動産の評価についても論点となりました。また、依頼者らと長男・二男で共有していた収益不動産の管理・賃料回収の問題は、事務管理に基づく受取物引渡し及び顛末報告を求める民事訴訟を起こし、和解により解決したました。
本件は、収益不動産に関するメジャーな論点が多く含まれており、また、案件全体の解決のための手続選択が難しい事件でした。本件は収益不動産の相続でトラブルになっている方の参考になると思われますのでご紹介いたします。なお、より詳細な事案・解決内容については、相続あんしん相談室の事例紹介をご確認ください。https://www.souzoku-koshigaya.net/jirei/post_189.html