犯罪・刑事事件の解決事例
#遺産分割 . #財産目録・調査

遺産調査により死亡保険金を長男が管理していることを突き止め、これを遺産に加えた上で依頼者の希望に沿った遺産分割をした事例

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小池 智康 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人Bolero南越谷法律事務所
所在地埼玉県 越谷市

この事例の依頼主

50代 男性

相談前の状況

本件の被相続人は、相談者のお母様であり、相談者は二男と長女でした。二男と長女は、被相続人が亡くなり、49日法要を終えた後、長男から遺産分割の提案を受けました。長男側の提案は、① 自宅(土地建物)と預貯金は長男② 二男と長女の自宅近くの農地は二男と長女が取得するというものでした。二男と長女は、被相続人の夫(相続人らからみて父)が交通事故でなくなった際に死亡保険金が保険会社から支払われており、この金銭はどうなったのかを長男に確認しましたが、長男からは被相続人の生活費で使った等の話があるだけで、詳細は明らかにされませんでした。二男及び長女としては、長男が実家の土地建物を相続することに異論はないが、死亡保険金についての説明が納得いかないとのことで、弊所に対応を依頼されました。

解決への流れ

二男及び長女のご依頼を受け、弊所では、以下の通り事案の処理方針を整理し、ご提案しました。① 遺産調査本件では現在残存する遺産だけでなく、お父様の死亡事故に伴い支払われた死亡保険金の所在が大きな争点になることから、保険金額、支払時期、支払先口座を明らかにすることが重要とご説明しました。② 受任通知及び交渉開始時期被相続人は農業に従事していたため、農協と取引があり、保険金も農協に入金している可能性がありました。また、長男も農協と取引があり、調査を妨害される可能性があったことから、遺産調査終了後に受任通知及び交渉を開始することとしました。③ 本件の解決に必要な法的手続の整理本件の法的手続を整理すると、現時点で存在が確実な財産を分ける手続(遺産分割)で対応できますが、死亡保険金については、権利の存否・金額が明確でないため(不当利得返還請求又は預託金返還請求)遺産分割では対応できず、別途、民事訴訟を提起することになります。この場合、弁護士費用の負担が重くなります。そこで、本件については、通常の案件よりも交渉期間を長めにとって、遺産分割と死亡保険金の問題を交渉で一括解決することを提案しました。以上を踏まえて、本件の対応を開始しました。まず、遺産調査(①)については、農協を含む金融機関、死亡保険金を支払った保険会社に照会し、保険金が当時の相続人代表者とされた長男に全額支払われていたことが判明しました。保険会社の関係の書類には、二男及び長女の署名・押印もありましたが、写しは交付されておらず、両名は内容を把握していない状態でした。以上の遺産調査を踏まえ、弊所から以下のとおりの提案をしました。① 実家の不動産は長男取得② 二男及び長女の自宅近くの不動産は両名が共有取得③ 預貯金及び死亡保険金は法定相続分で分割なお、③の死亡保険金については、被相続人の生活費等に費やした等、正当な使途については当然のこととして控除を認める旨提案しました。当方の提案後、長男にも代理人弁護士がつき、交渉を継続したところ、死亡保険金について、合理的な説明がなされ、残額は法定相続分で分割することで合意しました。また、不動産については、当方の提案を採用するとのことであったため、遺産分割の合意が成立しました。

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小池 智康 弁護士からのコメント

本件は、受任から7か月程度で交渉により解決した早期解決事例と言えます。本件の対応のポイントは、①死亡保険金の所在調査、②交渉による解決を優先した手続選択でした。①の死亡保険金については、二男及び長女はほとんど情報をもっていなかったため、事前にしっかり調査を行い、事実関係を正確に把握していたため、交渉開始後に追加調査を行う必要がなく、交渉が円滑に進みました。事前調査をおろそかにすると、情報で優位にある長男に振り回されてしまうため、事前調査の大切さを再確認する事例でした。また、②の手続選択については、理屈で割り切ると、遺産分割は家裁で調停、死亡保険金は地裁で民事訴訟という手続になり、時間・費用ともに相当な負担になります。本件は、預貯金口座から複数回の出金がなされた事案ではなく、死亡保険金の管理だけが問題になる事案でしたので、交渉による解決の見込みがそれなりにある事案でした。また、遺産分割については、二男及び長女は法定相続分にこだわっておらず、長男の意向を尊重する意思を示していました。これらの点を踏まえて、通常案件とはことなり、交渉での解決を重視した点が結果的に上手くいった事案と言えます。なお、本件の長男側の代理人から死亡保険金についての使途の説明が適切になされたことも、本件が交渉により解決することができた原因の一つと思われます。この点で、相手方代理人の対応も交渉による解決を選択するか否かの判断において重要と思われます。本事案の詳細な内容は以下の事例紹介をご参照ください。https://www.souzoku-koshigaya.net/jirei/jirei4/post_173.html