犯罪・刑事事件の解決事例
#建物明け渡し・立ち退き

債務不履行解除と仮処分先行事案

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神田 元 弁護士が解決
所属事務所神田元経営法律事務所
所在地東京都 港区

この事例の依頼主

年齢・性別 非公開

相談前の状況

都内にある賃貸マンションについては、高齢の女性が所有していました。しかし、オーナーが死亡してしまい、相続人が当該賃貸マンションを相続したのですが、調べてみますと賃借人は既に6か月以上も賃料を支払っておらず、何よりも契約相手の賃借人は当該マンションに既に住んでおらず、代わりに怪しげな人が住んでいるらしいということで、どうすればいいかとの相談がありました。

解決への流れ

まずは、滞納している賃料について督促状を賃借人あてに送付したのですが、賃借人が既に当該マンションに居なければ「宛名見当たらず」で戻ってくるものかと思っていましたら、ちゃんと受領されましたので、これは契約上の賃借人のほかに誰かいるということが推定されましたので、これは単純に契約上の賃借人を被告として建物明渡訴訟をしても効力がないと判断しました。そこで、現在の当該マンションの占有者を確定するために、東京地裁の保全部に「占有移転禁止仮処分」を申し立てました。申立て後、執行官に同行して当該マンションに行ってみますと、合鍵でドアが開き、中で、背中に倶利伽羅紋々の刺青が入っている人が寝ていました。執行官がその刺青男を起こすと、「俺はこの部屋の賃借人の●●氏から部屋を借りているのだ。俺以外にも中国人の李さん、金さんが同居している。」と証言したので、執行官ともども驚きましたが、執行官は執行調書に「占有者:△△(刺青男)、李何某、金何某」と記載しました。占有移転仮処分の執行後、早速、東京地裁に”●●、△△(刺青男)、李何某、金何某”を相手に建物明渡訴訟を提起しましたところ、刺青男から電話があり、李と金については俺が話をつけてやるのでいくらか出せ」という要求があり、仕方なく、刺青男、李、金との3人との間で建物明渡の和解を成立させました。そうしますと、建物占有者は契約上の賃借人●●だけですので、欠席判決で明渡認容判決をもらい、直ちに強制執行して、当該マンションの専有を回復しました。

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神田 元 弁護士からのコメント

本事案のように、契約上の賃借人が賃貸建物におらず、代わりに怪しげな人物(本事案では、”いわゆる占有屋”)が建物を占有している場合、明渡訴訟を行う前に、明渡の対象となる人を確定しなければなりませんので、「占有移転禁止仮処分」という保全手続を採る必要があります。地方裁判所の保全部に仮処分の申立てをして、決定が出れば、執行官に仮処分執行を申し立てます。実際に、執行官が現地に出向き、執行状況を調査し、本事案のように、契約上の賃借人以外に、当該物件に占有者がいれば、それら占有者を全て執行調書に記載してもらいます。このように仮処分執行をしてもらい、占有者を確定することにより、それら占有者からさらに第三者に当該物件の占有を移転することは禁止されることとなります。そして、”ロック”した占有者を相手に、建物明渡請求訴訟を提起することとなります。多くの場合、それら占有者との間では、強制執行におけるトラブルなどを回避するためもあって、多少の明渡協力金を支払って、任意で退去してもらうこととなります。いずれにしましても、賃料不払いによる建物明渡請求訴訟を提起する前には、必ず現地を調査し、契約上の賃借人以外に占有者がいる場合には、「占有移転禁止仮処分」手続を経ておくことが重要となります。